作業を請け負う業者には、それぞれ専門とする分野があります。
例えば、電気関連は電気工事士、自動車整備は自動車整備士が担当するなど、業種ごとに専門性を持っています。
今回は、鉄工業の作業者が業務改善のために提案・製作した治具について紹介します。
治具ってなに?
治具とは、 ものを作るときに使う「補助道具」のことです。特に、工場や作業現場で使われることが多く、正確な加工や組み立てを助ける役割を持っています。
どんな場面で使われる? 例えば、金属を切ったり穴を開けたりする作業では、材料をしっかり固定することが大切です。治具を使うことで、毎回同じ形・サイズで作ることができるため、品質の安定につながります。
治具の種類 治具にはいろいろな種類があります。例えば:
- 穴あけ治具:ドリルで穴を開けるときに正しい位置を保つためのもの
- 組み立て治具:部品を正しく組み合わせるために使うもの
- 測定治具:部品のサイズや角度を確認するためのもの
要するに、治具があることで「作業の効率が上がる」「ミスが減る」「品質が良くなる」といったメリットがあります。工場だけでなく、DIYや工作でも治具を使うこともあります。
治具の方向性を考える
前述した通り、治具は作業の補助道具です。つまり作業に特化した道具なのです。
どんなことを改善したいかや、品質をどの様に向上させたいかなどを考えて作っていきます。今回は廃材入れの中に良い素材がありましたので、それを使って治具を製作しました。

これは、事務所やオフィスにOAフロアを敷くときに高さを調整するためのベースです。
先日、オフィスの改修工事を行った際に出た廃材です。
これを使って高さを調整できる治具を作ってみたいと思います。
ベースの重さが足りないので…
ご覧の通り丸い部分が上で、四角い方が下になるのですが、四角い方の板厚が薄く、少し頼りないので、3mmの鉄板を追加で溶接します。
マジックで中心線を書いたあと、ベースの切り欠きに合わせます。

それから、四隅を溶接して外れない様にしました。ズレなければOKなので点付け程度で大丈夫です。


とりあえず4つ作りました。
これによって高さを微調整したいときやレベルを出したいときにも使えます。
また、鉄製であることもメリットで、床に鉄板が敷いてあり、そこにアースをとっている場合ベースの上で溶接することも可能です。
今回は、使い方の例としてボール盤での使用例を紹介します。
下の写真の様に、長物に穴をあけをする想定で、バイスからはみ出したところに穴あけをしなければならないとします。
その場合ドリルの押し込む力に負けてワーク(材料)が下がってしまうことがあります。

そこで、今回作ったような治具があれば、支えが増え、尚且つ容易に高さ調整が出来ます。
ネジ式なので高さ調整もラクラクです!
3mmの鉄板を追加したことで安定感も増して、連続して行う加工が早くなります。

もちろん、既製品もありますが、無いものを作って作業効率が上げることには多くのメリットがあります。
- 品質が安定する
- 作業スピードが早くなる
- 安全性が向上する
- 作業に対する新しいアイデアが生まれる
元が廃材なので、失敗しても鉄屑としてリサイクルできます。
想像して作った物が、使えたときの喜びは作業者としての技術力が向上するきっかけをとなることでしょう。
治具の必要性とは?
今回作った治具の目的は、材料を正しくセッティングすることで、作業の効率を上げ(時短)、なおかつ作業品質を一定に保つことです。
「だれでも、ただしく、かんたんに」
この言葉はシンプルですが、ものづくりの現場ではとても重要な考え方です。そして、同時にとても難しい課題でもあります。
たとえば、重たい材料に穴をあける作業は、大きな危険を伴います。材料がしっかり平行に固定されていなければ、まっすぐな穴をあけることができません。それだけでなく、万が一ドリルが噛み込んでしまった場合、大きな事故につながるおそれもあります。
もちろん、治具を使って正しくセッティングしていてもリスクはゼロではありません。しかし、不安定な状態で作業をすれば、その危険性はさらに高まります。
熟練の職人であれば、手持ちの道具で素早くセッティングできるかもしれません。しかし、このブログは初心者の方を想定しています。
だからこそ、**「だれでも、ただしく、かんたんに」**が重要なのです。
中でも「かんたんに」は、特に大切なポイントです。
なぜなら、作業を「かんたんに」できれば、それだけ時短につながるからです。
そして、時間に余裕が生まれれば、安全に配慮する時間も確保できます。
初心者の方は、仕事に一生懸命になるあまり、周りが見えなくなってしまうことがあります。本来「安全第一」であるはずなのに、知らないうちに「安全第二」になってしまう――そんな場面を、現場ではよく見かけます。
真剣に取り組んでいるからこそ、品質を優先してしまい、安全まで気が回らない。これは真面目な人ほど陥りやすい落とし穴です。お客様に良いものを届けたいという想いの裏返しでもありますが、自分の安全が後回しになってしまっては本末転倒です。
だからこそ、「かんたんに」作業ができる環境を整えることが大切です。
時短できれば、安全を後から取り戻す“余裕”も生まれます。
時間に追われる状況では、周囲に気を配ることができません。
それが、事故やトラブルの原因になることもあります。
治具は、そういったリスクを減らすための大切な道具です。
安全に、正確に、そして誰にでも使いやすく。
初心者の方こそ、積極的に活用してほしいと考えています。
まとめ:治具は「安全」と「品質」の土台になる
治具を使う目的は、ただ作業を楽にするためだけではありません。
正しく、かんたんに材料を固定できることで、作業の精度が上がり、時間も短縮できる。その結果、安全に気を配る「余裕」も生まれます。
特に初心者にとっては、「だれでも、ただしく、かんたんに」作業できることが、事故を防ぎ、ミスを減らすカギになります。
真面目に、丁寧に取り組む人ほど、自分の安全が後回しになりがちです。
だからこそ、「かんたんに、安全に作業できる環境」を整えることは、とても重要です。
治具は、そんな現場の支えになる存在です。
作業効率、品質、そして安全。そのすべてを両立するために、治具の活用をぜひ見直してみてください。
「今日も一日、ご安全に」