しごとの図書室

メカニカルシールとグランドパッキンの違いとは?現場で迷わない見分け方と特徴を解説

そもそも、このポンプは…?

ポンプの点検で最初にチェックしたいポイントは、据えられているポンプがメカニカルシールなのか、それともグランドパッキンなのか、ということですよね。見た目は異なるものの、慣れないと判断に迷うことがあります。そこで今回は、「メカニカルシールとグランドパッキンの見分け方」に焦点を当てて、その特徴を分かりやすくご説明します。

(例)左がグランドパッキンの渦巻きポンプ、右がメカニカルシールの渦巻きポンプ

ポンプのシールについて:グランドパッキンとメカニカルシール

ポンプのシールには、主にグランドパッキンとメカニカルシールの2種類があります。それぞれの正常な状態と、注意すべき点についてご説明します。

  • グランドパッキンポンプの場合:
    • 正常な状態: ポタポタとわずかに水が滴る程度が正常です。これは、パッキンと軸の摩擦による発熱を抑え、焼き付きを防ぐために必要な漏れです。
    • 注意点: ポタポタというよりも、線状に多量の水が漏れている場合は、パッキンの締め付けが緩すぎるか、摩耗している可能性があります。適度に滴る程度になるよう、グランドの締め付けを調整してください。
  • メカニカルシールポンプの場合:
    • 正常な状態: 基本的に漏れがない状態が正常です。
    • 注意点: グランドパッキンポンプのようにポタポタと漏れている場合は、メカニカルシールが寿命を迎えているサインです。速やかにポンプの整備を計画してください。

このように、ポンプの種類によってシールの正常な状態は異なります。日々の点検でこれらの状態を把握しておくことが、ポンプの適切な管理につながります。

メカニカルシールの特徴

メカニカルシール
  • 仕組み:
    • 主に、回転する部分(回転環)固定された部分(固定環) の2つの精密な当たり面が、非常にわずかな隙間を保ちながら密着することでシールします。
      この隙間にはポンプ内の液体が薄い膜となって入り込み、潤滑と冷却の役割を果たします。そして、スプリングなどの力で、常に密着する力が加えられています。
  • 特徴:
    • 漏れが非常に少ない: 適切に組込みが出来ていれば、ほとんど漏れがない状態を保てます。
    • メンテナンス頻度が低い: 摩耗が少ないため、長期間の使用が可能です。
    • 高い圧力や高速回転に対応できる: 精密な構造のため、比較的過酷な条件下でも使用できます。
    • 消費電力が少ない: 摩擦抵抗が少ないため、モーターの効率が良いです。
    • 構造が複雑で高価: 部品点数が多く、精密な加工が必要なため、一般的にグランドパッキンよりも高価です。
  • 用途:
    • 漏れを極力避けたい場合(有害な液体、高価な液体など)
    • 比較的高圧力や高速回転のポンプ
    • 長期間の安定した運転が求められる場合
  • 注意点
    • メカニカルシールの当たり面は最も重要な部分であるため、基本的に触れてはいけません。当たり面とは、上記の写真でいえば、バネの先端部と写真右側にある白い部分が接触する面のことです。ここが汚れると漏れの原因になるため、組み付ける際は十分に注意しましょう。

グランドパッキンの特徴

グランドパッキン(炭化繊維)
グランドパッキン(アラミド繊維)
  • 仕組み:
    • 紐状のパッキン材 を、ポンプの軸とケーシングの間にある「スタッフィングボックス」と呼ばれる空間に詰め込み、グランド(押さえ金) で締め付けることでパッキン材が軸に押し付けられ、隙間を塞ぎます。しかし、シール効果を得るためには、ある程度の締め付け力が必要ですが、締め付けすぎると軸の回転を妨げたり、パッキンや軸を傷つけたりする可能性があります。そのため、わずかに漏れを許容することで、パッキンと軸の摩擦による発熱を抑え、潤滑する役割も持たせます。
  • 特徴:
    • 構造が比較的簡単で安価: 紐状のパッキン材と押さえ金で構成されており、メカニカルシールに比べて安価です。
    • 汎用性が高い: 様々な種類の液体や条件に対応できるパッキン材があります。
    • 現場での調整が比較的容易: 締め付け具合を調整することで、ある程度の漏れ量を調整できます。
    • 定期的なメンテナンスが必要: 軸との摩擦により摩耗するため、定期的な締め増しや交換が必要です。
    • ある程度の漏れは避けられない: シール原理上、わずかな漏れが発生します。
    • 高速回転には不向き: 摩擦熱が大きくなるため、高速回転のポンプには適していません。
  • 用途:
    • 比較的低圧力・低速回転のポンプ
    • ある程度の漏れが許容される場合(清水など)
    • 初期コストを抑えたい場合

代表的なグランドパッキンの簡易比較表

項目炭化繊維アラミド繊維
耐熱性◎(高温対応)◯(中高温まで)
耐薬品性△〜◯(限定的)
耐摩耗性◯(硬くて強いが攻撃性あり)◎(高強度だが軟らかめ)
密着性
軸への攻撃性ややあり少ない
  • 注意点
    • 炭化繊維
      • 非常に硬めの素材のため、軸に対する攻撃性がやや高い
      • シャフト・スリーブの摩耗に注意
      • シール性が高い反面、軸との摩擦が大きくなる傾向があるため、潤滑の確保が必要
    • アラミド繊維
      • 炭化繊維よりも耐熱性や化学耐性はやや劣る
      • 柔らかめの素材のため、過度な締め込みに注意(形が崩れやすくなる)
      • 使用条件によっては早期摩耗のリスクがある
      • 組み合わせて使う場合もあるので、整備の際はパーツリストや分解図で必ず確認すること。

【まとめ】

  • 初心者でも見分けられるポイントを押さえておこう
  • 点検の第一歩は「何が付いてるかを知ること」
  • この記事を参考に、現場での不安をひとつずつ解消していこう!
特徴メカニカルシールグランドパッキン
漏れ量非常に少ないわずかに漏れる
メンテナンス頻度が低い定期的な締め増しや交換が必要
圧力・速度高圧力・高速回転に対応可能低圧力・低速回転向き
構造複雑で精密簡単
コスト高価安価
用途漏れを避けたい、高性能なポンプ汎用性が高く、初期コストを抑えたい場合

設置コストを抑えたい場合にはグランドパッキンが有利ですが、長期的視点で管理コスト(人件費・部品交換頻度・エネルギー損失)を総合評価すると、必ずしも最適解とは言い切れません。特に今後の人口減少に伴う技術者不足を考慮すれば、メンテナンス頻度が低く無人化対応にも適したメカニカルシールの需要が高まっていくことが予測されます。

この記事がポンプの点検業務に携わる方や設備設計の方々にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

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「今日も一日、ご安全に!」