はじめに
近年の夏は年々気温が上昇しており、作業現場における熱中症のリスクも確実に高まっています。
「まだ大丈夫」と油断していると、命に関わる事態にもなりかねません。
もしあなたが熱中症のような症状を感じて、上司や同僚に休憩を申し出るとしたら、どのように伝えますか?
また、後輩・同僚・先輩が「具合が悪いから少し休憩する」と伝えてきたとき、あなたはどう受け止めますか?
今回は、「知らなかった」では済まされない、少し怖い内容です。
現場で働く作業員の目線から、今すぐ実践できる本気の熱中症対策をまとめました!
熱中症のリスクは「思った以上」に高い
近年の夏は、気温の上昇が著しく、もはや過去の常識が通用しないと感じるほど、天候の変化が激しくなっています。
しかし、どんなに暑くても、現場の仕事は待ってくれません。
もちろん、真面目に頑張ることは大切ですが──「頑張りすぎて“死事”になってしまっては意味がありません」。
さて、前述のとおり、もしあなたが「具合が悪い」と感じて休憩を申し出たとします。
そのとき、きっと周囲の仲間は「無理するな」と声をかけ、休憩を勧めてくれるでしょう。
でも、実はそこに最も注意すべき落とし穴があるのです。
休憩にも「指示」が必要?
「休憩にいちいち指示がいるのか!? 早く休ませろ!」
──そう言いたくなる気持ちも分かります。ですが、そこはグッとこらえてください。
なぜなら、その“指示”には、相手を守るための優しさが込められているからです。
では、具体的にどんな“指示”が必要なのか、以下にまとめます。
- 涼しい部屋や日陰など、風通しの良い場所で休むこと
- 十分な水分を補給すること
- 体温を測定すること
- 寒気を感じたらすぐに申し出ること
- 誰かの目が届く場所で休むこと(※一人にしない)
上の2つももちろん重要ですが、特に大切なのが「体温の測定」です。
熱中症の初期には微熱が見られることが多く、症状が進行すると体温調節がきかなくなり、39度を超えることもあります。
微熱の段階であっても、迷わず医療機関を受診することを強くおすすめします。
ここで注意したいのが体温計の種類です。
非接触式の体温計は便利ですが、熱中症の場合には正確な体温が測れないことがあります。
というのも、熱中症の症状が進んでいる場合、皮膚の表面温度が下がってしまうことがあるためです。
できるだけ、脇に挟むタイプの体温計(実測式)を使うようにしてください。
私たちは現場のプロであっても、医療のプロではありません。
たとえ平熱であっても、頭痛・吐き気・めまい・寒気などの症状がある場合は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
また、誰かを休憩させる場合は、「一人で休ませる」のは避けてください。
近くに人がいる場所で休ませるか、定期的に様子を見に行くようにしましょう。
もし一人で休んでいる最中に意識を失えば、命に関わる事態になる恐れもあるのです。

なぜ“付き添い”が重要なのか
体調が悪い人に「じゃあ、あっちで少し休んでて」と言ってしまいがちですが──
一人での休憩は、実は非常に危険です。
熱中症は、急激に症状が悪化することがある病気です。
ついさっきまで自力で歩けていた人が、数分後には意識を失ってしまう。
そんなケースは、決して珍しくありません。
一人で休ませた場合、もしもその間に意識を失ってしまったらどうなるか。
気づかれるまでに時間がかかれば、その分だけ対応が遅れ、命に関わるリスクが一気に高まります。
そのため、休憩中は「誰かがそばにいる」または「定期的に様子を見に行く」ことが必要です。
付き添う人は、会話をしなくても構いません。
「ただそばにいること」が、最速の異変察知と、最速の対応につながります。
また、付き添い役の人は以下の点に注意してください:
- 顔色や呼吸の状態に変化がないか見る
- 呼びかけに対して反応があるか確認する
- 水分補給ができているか確認する
- 「寒気」「吐き気」「頭が重い」といった訴えがあればすぐ報告する
「大丈夫そうに見えるから」と油断しないこと。
“付き添い”は、仲間の命を守る大事な任務のひとつなのです。
熱中症は労災認定される?
結論から言うと──
熱中症は条件を満たせば労災として認定されます。
厚生労働省では、業務に起因する熱中症について、労働災害として正式に取り扱っています。つまり、「暑い日だったから仕方ない」「本人の体調管理不足」では終わらせられないのです。
どんな場合に労災となるのか?
以下のような条件がそろっていると、労災認定の対象になる可能性があります:
- 業務時間中に発症した
- 屋外や高温多湿の場所での作業だった
- 安全対策(休憩・水分補給・空調設備など)が不十分だった
- 明確に職場の環境が熱中症の原因となっている
たとえば、炎天下で長時間の作業をしていたにも関わらず、十分な休憩が与えられていなかった場合や、水分補給の指示・設備がなかった場合などは、労災として認められるケースがあります。
労災になるとどうなる?
労災認定されると、治療費や休業補償が労災保険から支払われます。
本人の負担は軽くなり、適切な医療と補償を受けられることになります。
また、労災が起きた場合、事業者には再発防止の責任も発生します。
気をつけたいのは「証拠」
ただし、労災認定を受けるには、「いつ・どこで・どんな作業をしていたか」という記録や証言が必要です。
もし体調が悪くなった場合は、できるだけ早く上司に報告し、記録を残すことが大切です。
そして、可能であれば医療機関で「熱中症」の診断を受けておくと、手続きもスムーズになります。
体調不良を伝える言い回し集
このブログは現場初心者の方にも分かりやすく伝えることを大切にしています。
とはいえ、現場に入ったばかりの頃は、「休憩させてください!」なんて、なかなか言い出しづらいものです。
「自分だけ抜けるのは申し訳ない」「我慢すればなんとかなる」と無理をしてしまう方も多いでしょう。
でも、そこで倒れてしまえば、自分にも、仲間にも、もっと大きな負担がかかります。
だからこそ、「言い出しやすくて、ちゃんと伝わる言い方」をいくつかご紹介します。
ポイントは、軽いトーンで伝えても、周りが深刻に受け取ってくれる表現を選ぶことです。
🧍♂️ 自分の体調が悪いとき
👀 仲間の様子が心配なとき
📣 上司に相談するとき
これらの言い回しは、「今すぐやばい」ではなくても、早めに気づける空気を作るための言葉です。自分のためにも、周りの人のためにも、言葉の準備をしておくことが安全への第一歩です。
油断しやすいタイミングとは?
特に注意したいのは、
- 朝一番(まだ涼しいからと油断しがち)
- 曇りの日(直射日光がなくても蒸し暑い)
- 5月〜6月(まだ体が暑さに慣れていない) の気温差が激しい日
- 前日の、飲み過ぎによる体調不良(二日酔い)
- 熱中症っぽい症状から回復した日の夕方〜就寝までの間(隠れ熱中症の可能性)
「隠れ熱中症」とは、自覚症状がない、あるいはごく軽い症状にもかかわらず、体内で熱中症が進行している状態を指す俗称です。通常の熱中症のような、めまいや吐き気、大量の発汗といった典型的な症状が現れにくいため、本人も周囲も気づきにくいのが特徴です。
これは、現場職に限った話ではありません。
暑さに慣れていない事務職の方や、屋外に出る機会が少ない方も注意が必要です。
体が暑さに慣れていないと、熱中症のリスクが高まるため、十分に気をつけてください。
現場でできる熱中症対策5つのポイント
① こまめな水分・塩分補給を徹底する
- 水分だけでなく、塩分も一緒に摂取することが大切。
- おすすめは、スポーツドリンクや経口補水液です。
- 水だけだと逆に脱水症状を招くこともあります。
普段飲む水としては高級すぎるかもしれませんが、「脱水症状と言えばこれ!」と思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に汗をたくさんかいた時には、経口補水液の摂取がおすすめです。私個人としては、アップル風味のものが好みです。
経口補水液は、脱水症状の際に失われやすい水分と電解質(特にナトリウムやカリウム)をバランスよく補給できるように設計されています。通常の水分補給であれば水やスポーツドリンクでも十分ですが、発汗量が多い時や脱水症状が疑われる場合には、経口補水液が適しています。
アップル風味の経口補水液は、飲みやすさにも配慮されており、汗を多くかいた後や体調がすぐれない時にもおすすめです。ちなみに、青色の方は少し、しょっぱいです。
そこは、お好みでお選び下さい。
② 服装と装備を見直す(通気性・吸汗速乾)
- 夏場は、なるべく通気性がよく、汗をすばやく乾かす素材の服装を選びましょう。
- 最近では、接触冷感インナーや空調服も人気です!
通気性や吸汗速乾性のあるインナーを選ぶことで、体温調節の負担が大きく変わります。
実際に5枚の接触冷感インナーを着くらべた比較記事もありますので、参考にしてみてください。
「どれも同じじゃないの?」と思った方へ —— 実際に5枚を着くらべた比較記事はこちら!
③ 作業ペースを調整する(休憩の取り方)
- 2時間に1回は日陰で休憩
- 体が熱いと感じたら無理せず作業を止める
「少し休みすぎかな?」と思うくらいがちょうどいいです。
④ 体調チェックをルーティン化する
- 「声かけ」や「セルフチェック」の習慣を紹介
- 作業前・作業中・作業後に、次のチェックをしましょう。
- 顔色
- 汗の量
- 頭痛や吐き気 気になる症状があれば、すぐに周囲に報告する習慣をつけましょう。
⑤ 万が一に備える(応急処置方法を知っておく)
- 「熱中症になったらこうする」を簡単にまとめる
- 熱中症の疑いがある場合は、すぐに
- 日陰に移動
- 衣服をゆるめる
- 冷やす(首・脇の下・足の付け根)
- 水分補給 を行い、少しでも不安を感じるなら医療機関へ。
まとめ
初心者のうちは、すべてに気を配るのは難しいものです。
しかし、「知っていれば助かる命がある」のもまた事実。
「無知は罪」という言葉もあるように、日ごろから心がけておくことが大切です。
「明日は我が身」という意識で、仲間を思いやる気持ちを忘れずにいましょう。
いつか、あなたが成長し、現場を任される立場になったとき、この意識はきっと役に立ちます。
会社にとっても、あなたにとっても、同僚はかけがえのない存在であり、大切な財産です。
人材を人財と思える人や、会社はきっと大きく成長することでしょう。
熱中症対策は、「今すぐできる準備」と「毎日の習慣」がカギ。
現場で頑張るあなた自身を守るためにも、無理をせず、しっかり暑さに備えていきましょう。
今日も一日、ご安全に!