はじめに

配管や設備が入り乱れる機械室の中で、
薄暗い照明を反射してひと際輝いている配管たち。

きっとそれは、アルミシートをまとった
グラスウールではないでしょうか?

そんな中、近年「黒い断熱材」が
増えてきているのにお気づきでしょうか?

ただでさえ一般の人が近づかない部屋の中で、
さらにその配管に巻かれている素材について考える、
超絶ニッチな記事となっております。

黒いやつ、グレーのやつ、ギラギラのやつ…

「保温材」としか認識されていないそれらについて、
現場目線でわかりやすく解説します。

この記事では以下の内容をまとめています。

✔ エアロフレックスとはどんな素材か
✔ グラスウールとの違い・使い分け
✔ 施工時間の目安
✔ 使用時の注意点

エアロフレックスとは?

エアロフレックスとは、独立気泡構造の合成ゴム系断熱材のことです。
黒くて軽いスポンジ状の見た目が特徴で、配管に取り付けるチューブ型
(パイプカバー)と板状のシート型の2タイプが主に流通しています。

まず押さえておきたいのが、「エアロフレックス」は商品名だということです。
正確には、タイのAeroflex (Thailand) Co., Ltd.が製造し、
日本では日商エアロ株式会社が輸入・販売している製品の名称です。

同種の素材(合成ゴム系フォーム断熱材)は他社からも販売されていますが、
国内では「エアロフレックス」の認知度が高く、現場では素材そのものを
指す言葉として使われることがほとんどです。

同じ合成ゴム系断熱材として「アーマフレックス」という製品もあります。
筆者はエアロフレックスしか施工経験がないため、アーマフレックスについての
詳細は割愛しますが、施工したことがある同僚によると以下のような使い分けがあるようです。

・アーマフレックス → やや硬めの質感。船舶・発電所・大型プラントなど
 温度変化が激しく環境の厳しい現場で使われることが多い

・エアロフレックス → オフィスビル・商業施設・住居施設など
 比較的環境変化が安定している現場で使われることが多い

ただし明確な規定があるわけではなく、施工主や施工業者の判断による
部分も大きいようです。

なお、エアロフレックスは決して「ビル専用の素材」ではありません。
世界100か国以上で採用されているグローバルブランドであり、
石油・ガスのプラント設備・船舶・ビルの空調システムなど
幅広い産業分野で採用されています。

エアロフレックスとグラスウールの違い

では、本題に入っていきましょう。

保温材の代表格といえばグラスウールです。どちらも「断熱・保温」を目的とした素材ですが、特性は大きく異なります。

比較項目エアロフレックスグラスウール
素材合成ゴム系フォームガラス繊維
防湿性◎ 非常に高い△ 低い(別途防湿層が必要)
耐熱温度+125℃まで+300℃以上も対応可
結露防止◎ 得意✕ 苦手
施工時のチクチク・粉塵なしあり(要防護)
自己消火性あり(燃え広がりにくい)不燃
価格高い安い

防湿性の差が最大のポイントです。 グラスウールは湿気を吸収しやすく、水分が入り込むと断熱性能が大きく落ちてしまいます。一方エアロフレックスは独立した気泡構造のため、湿気が内部に浸透しにくく、結露が発生しやすい冷水管やドレン管には特に向いています。

逆に、蒸気配管のような高温(100℃以上)の配管にはエアロフレックスは使えません。耐熱上限が+125℃なので、蒸気配管にはグラスウールが適しています。

どちらが優れているというより、配管の温度と用途で使い分けるものと理解するのが正解です。

施工方法と施工時間の違い

グラスウールの施工

もはや、説明不要の定番の材料です。

グラスウールは帯状のシートや筒状の保温筒を配管にかぶせて、
アルミテープや結束線で固定する方法が一般的です。
大きなRのエルボや複雑な形状はシート型を成形して対応します。

フランジ・バルブ・定期的な脱着が必要な箇所の保温は
グラスウールの方が施工しやすく、エアロフレックスよりも
相性が良いと言えます。

ただし作業環境には注意が必要です。
ガラス繊維が皮膚や粘膜に触れるとかゆみや痛みが出るため、
長袖・手袋・マスクの着用が必須です。
粉塵も発生するため、天井裏や狭い機械室での作業は
特に注意して保護具をしっかり着用しましょう。

とはいえ、現実はなかなか難しいですよね。
天井裏や床下は狭くてヘルメットを被って作業はほぼ不可能…
保護具メーカーさん、なんか良いもの作って下さい
(´;ω;`)

エアロフレックスの施工

エアロフレックスのチューブ型には、スリット(縦の切れ目)が
入っているものと入っていないものの2種類があります。

既存の配管に後から施工する場合はスリット入りを選び、
切れ目を開いて配管に通してから専用接着剤(エアロボンド)で
貼り合わせます。

エルボやチーズ程度の形状であれば、スリットなしの筒状タイプを
カットしてエルボ・チーズの形をあらかじめ作ってから施工します。
角ダクトのような四角い形状にはシート型を貼り付けていきます。

以下のような部品の保温にはグラスウールの方が相性が良いです。

・ゲートバルブ
・流量計
・定期的な脱着が必要なフィルター類

これらは形状が複雑だったり取り外しの可能性がある箇所のため、
エアロフレックスだと施工のやり直しが発生しやすく、
一度剥がしてしまうと元通りに貼り直すことはほぼ不可能です。
私の職場では、エアロフレックスと、グラスウールをうまく組み合わせて
施工しています。


⚠️ 合成ゴム系断熱材で最も大切なこと

エアロフレックスやアーマフレックスのような
合成ゴム系断熱材は「すき間」があってはいけません。

これが施工において最も重要なポイントです。

合成ゴム系断熱材は「密着」が命です。
どれだけ高品質な材料を使っていても、
すき間がひとつでもあれば性能はグラスウール以下になります。

手を抜いた施工は本当に意味がありません。
丁寧な施工こそが、エアロフレックスの性能を
最大限に引き出す唯一の方法です。

なお、複雑な形状にどうしてもエアロフレックスを使いたい場合は、
メーカーに相談すると特注で製作してもらえますので相談してみて下さい。

施工時の作業環境という点では、エアロフレックスは粉塵が出ず
チクチク感もないため、グラスウールと比べて快適に作業できます。

一方、施工時間はグラスウールの2〜3倍程度かかります。
理由はエアロボンドを使った貼り合わせに
「塗布 → 乾燥待ち → 圧着→追加の塗布→仕上げ→テープ仕上げ」
という工程が生じるためです。
継ぎ目や端面をひとつひとつ丁寧に処理する必要があり、
施工精度が仕上がりの品質に直結します。

しかし丁寧に施工さえできれば、その効果は長持ちします。

毎年巻き替えが必要だったグラスウールが、
エアロフレックスに変えることで何年も結露しない状態を維持できます。

LED照明と同じように、初期コストこそ高いものの、
長期的に見れば十分にその費用を回収できると思います。

施工性の比較表

項目エアロフレックスグラスウール
粉塵・チクチクなしあり(要防護)
有機溶剤の有無あり(換気やマスクが必要)なし
複雑な形状への対応難しい比較的容易
施工時間の目安グラスウールの2〜3倍短い
必要な道具の種類多い少ない
材料の搬送大きい(保温筒 2m/本)容易(保温筒 1m/本)
コスト(初期)高め安い

エアロフレックス施工時の危険性と対策

エアロフレックスを施工する際、見落としやすい注意点があります。それが専用接着剤(エアロボンド)に含まれる有機溶剤です。

エアロボンドにはトルエンをはじめとする有機溶剤が含まれています。トルエンは揮発性が高く、吸い込んだ場合に頭痛・めまい・吐き気・集中力の低下などを引き起こすことがあります。密閉空間で大量に使用すると、短時間でも体調に影響が出る可能性があるため注意が必要です。

施工する際は、適切な換気及び保護具を着用して作業にあたって下さい。

具体的な対策

換気の確保が最優先です。 窓を開ける・換気扇を回す・送風機を使うなど、作業前に必ず換気経路を確保してください。天井裏・機械室・ピットなど密閉されやすい場所では特に徹底する必要があります。

防毒マスクの着用を推奨します。 一般的な防塵マスクでは有機溶剤には対応できません。有機ガス用の吸収缶を装着した防毒マスクを使用してください。作業頻度が高い方は、使い捨てではなく吸収缶交換式のものを用意しておくと安心です。また、吸収缶を使用する際はこちらのリテイナーとメリヤスを組み合わせて使用します。

保護手袋と保護メガネも必須です。 エアロボンドが皮膚に触れると炎症を起こすことがあります。耐溶剤性の手袋(使い捨てのニトリルゴム製など)を着用し、眼への飛散を防ぐため保護メガネも着けましょう。髪の毛や体毛に付着すると地獄ですよ。

使用後はすぐにキャップを締めてください。 エアロボンドは揮発しやすいため、使い終わったら必ずキャップを閉めます。開封したまま置いておくと、知らないうちに室内の溶剤濃度が上がっていることがあります。

使用量を必要最低限にすることも大切です。 厚塗りにしても接着力は上がりません。薄く均一に塗る方が乾燥も早く、溶剤の発散量も抑えられます。

まとめ

エアロフレックスとグラスウールは「どちらが優れているか」ではなく、配管の用途と温度条件で使い分ける素材です。

結露しやすい冷水管・ドレン管・給水管にはエアロフレックス、表面温度が100℃を超えるような蒸気配管にはグラスウール用いる。

この基本を押さえておくだけで、現場の保温工事を見る目が変わります。

施工時間という点ではエアロフレックスのほうが手間がかかりますが、遮熱性の高さと仕上がりの美しさはグラスウールにはない強みです。一方で、接着剤(エアロボンド)に含まれる有機溶剤への対応は必須事項です。換気・防毒マスク・保護手袋のセットを準備した上で施工に臨むようにしましょう。

保温材の知識を持っておくことは、日常点検での異常発見にも直結します。「保温が濡れている」「剥がれている」「ここだけ断熱されていない」

こうした変化に気づけるようになると、建物管理の精度が確実に上がります。
次回は、エアロフレックスの基本的な施工方法について解説します。

今日も一日、ご安全に